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トラブルを未然に防ぐ!瑕疵担保責任と売却時の事前対策を徹底解説

不動産売却
2022.08.21

古くなった家の売却を進めたいけれど、売主として負うべき責任に関する知識が曖昧。その状態で契約をしたら、後々金銭的な負担やトラブルが起こるかもしれない...。

そう思い、売却への腰がどんどん重くなっていませんか?

『瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)』と『契約不適合責任』。

この二つの制度内容について知識を備えた上で売却に臨めば、後々損をしたりトラブルに巻き込まれることを防ぐことができます。

2020年3月末までは、売主が負うべき責任は『瑕疵担保責任』と民法上で定められていました。

瑕疵とは、傷や欠点のこと。瑕疵担保責任とは、傷がついたものや欠陥のあるものを売った時に負うことになる責任です。

例えば、購入時に知らなかった雨漏りや地盤の沈下といったトラブルに対して、売主が責任を負います。

そして、2020年4月1日に施行された民法改正で、『瑕疵担保責任』は『契約不適合責任』という制度に変わりました。

『契約不適合責任』とは、売主が種類、品質又は数量に関して契約の内容に合わない目的物を引き渡した場合の売主の責任のことです。

契約不適合責任では『売買契約書に書かれていたかどうか』が、責任追求のポイントになります。

例えば、買主は契約前にその住宅の瑕疵を知っていたとします。

しかし、契約書にその瑕疵が明記されていない場合は、契約内容と異なるという理由で売主に責任追求ができてしまうのです。

この記事では、瑕疵担保責任と契約不適合責任のそれぞれの内容と更新された点についてわかりやすく説明します。

また、契約不適合にならないための契約にまつわる3つのポイントとして、『契約時にすり合わせる内容』や『免責の特約が結べる場合』、『契約の主体による期間の違い』について。

さらに、売主が事前にできる3つの対応策として『物件状況確認書への記入』や『ホームインスペクション(住宅診断)の実施』、『瑕疵保険への加入』についてもご紹介します。

本記事を参考にして、まずは知識を備えることで、売却後も安心できる取引への道筋が見え、スムーズに売却の準備に進むことができるでしょう。


監修者情報

印南和行(宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、一級建築士、一級建築施工管理技士、不動産コンサルティング技能士試験合格)
全国不動産売却安心取引協会 理事長。住宅専門チャンネル「YouTube不動産」が「わかりやすくて参考になる」と大好評でチャンネル登録者8万人、総視聴回数2100万回を超える(2022年7月1日現在)。著書に「プロ建築士が絶対しない家の建て方」(日本実業出版社)、「プロが教える資産価値を上げる住まいのメンテナンス」(週刊住宅新聞社)がある。


目次

1. 瑕疵担保責任と契約不適合責任の3つの違い
 1-1 瑕疵の対象
 1-2 損害の範囲
 1-3 対抗措置
2. 契約不適合を防ぐための契約のポイント3点
 2-1 契約時にすり合わせすべき内容
 2-2 免責の特約が結べること
 2-3 契約の主体によって契約期間が変わる
3. 売主が事前にできる対応策3つ
 3-1 物件状況確認書に詳細を記入
 3-2 ホームインスペクション(住宅診断)の実施
 3-3 既存住宅売買の瑕疵保険への加入
4. まとめ


1、瑕疵担保責任と契約不適合責任の3つの違い

2020年4月1日に施行された民法改正により『瑕疵担保責任』は『契約不適合責任』に変わりました。

変更の理由には、取引される目的物(不動産)が、契約内容に適合しない場合は、債務不履行(契約によって約束した義務を果たさないこと)に該当するのではないかという考え方があります。

瑕疵担保責任では、隠れた瑕疵(傷や欠点)に限定されていた責任。

隠れていたかどうか、瑕疵かどうかなど客観的な立証が難しく、買主側の泣き寝入りとなってしまう点も多々ありました。

契約不適合責任になり、隠れたものであるかどうか、瑕疵かどうかは関係なく、引き渡し後の目的物がその契約内容に適合しているかどうかが問題となります。

より買主を広く保護する制度に変わったのです。

瑕疵担保責任から契約不適合責任になり変更となった、1)瑕疵の対象範囲、2)損害として認められる範囲、3)買主が講じることができる請求の内容について変更点を中心に説明します。

3つの違いを読むことで、どの点が買主にとって有利になっているのか、売主として注意すべき点がわかります。

1)瑕疵の対象範囲

瑕疵の対象範囲について『瑕疵担保責任』と『契約不適合責任』の違いはこちらです。

瑕疵担保責任 隠れた瑕疵、つまり、不動産の購入時点においてその瑕疵が買主にとって発見不可能なものが対象。
契約不適合責任 契約履行時(引渡し)までの瑕疵で、契約内容と一致しないものが対象。

※『隠れた』瑕疵である必要はない

瑕疵担保責任で対象となる隠れた瑕疵としてよく挙げられているのは、雨漏りや白アリ被害を始めとする害虫被害、基礎の傾き、配管からの水漏れなど。

土地の瑕疵には、廃棄物の埋没、土壌汚染、地盤の陥没などがあります。

しかし、瑕疵担保責任がなくなり、瑕疵が『隠れたもの』かどうかは問わなくなりました。

ポイントは、取引内容や契約と異なる点があるかどうか。

売却後に契約内容と照らして異なる点が見つかった場合、売主は契約不適合責任を負うことになります。

対象となるものは瑕疵担保責任でも挙げられていた雨漏りやシロアリ被害など物件の欠陥や、面積・数量の不足などです。

2)損害の範囲

損害が認められる範囲について『瑕疵担保責任』と『契約不適合責任』の違いはこちらです。

瑕疵担保責任 信頼利益

瑕疵を知らなかったことで買主が受けた損害

契約不適合責任 履行利益(※信頼利益も含む)


履行されていれば得られていたと予想される利益

瑕疵担保責任の場合は、信頼利益、つまり瑕疵を知らなかったことで買主が受けた損害について請求ができます。

契約不適合責任は、信頼利益に加えて履行されていれば得られていたと予想される利益についても損害の対象となりました。

例えば、物件の引き渡し後に雨漏りが発覚し、売主に瑕疵担保責任があったとします。

物件で寝食が難しく、ホテルに宿泊せざるをえなかった場合「ホテルの宿泊費」は損害の範囲となります。

契約不適合責任の場合は、ホテル宿泊費のような損害に加えて、本来家で寝食を行えていたら自宅でゆっくりとした時間を過ごせていたが、わざわざホテルに出向き暮らさなければならなくなったことへの心理的負担の損害も対象としています。

3)対抗措置

契約の目的が達成できない場合、買主が売主に対して請求できる措置に関して、『瑕疵担保責任』と『契約不適合責任』の違いはこちらです。

瑕疵担保責任 損害賠償請求
契約解除
契約不適合責任 追完請求
代金減額請求
催告解除
無催告解除
損害賠償請求

瑕疵担保責任では、瑕疵が発見された場合、発見から1年間は売主に対して『損害賠償の請求』ができ、契約の目的が達成できない場合は『契約を解除する権利』がありました。

契約不適合責任では、『損害賠償請求』と『契約解除』に加えて、『追完請求』と『代金減額請求』も行使できるようになりました。

『追完請求権』とは、不備に対してその部分の補修や代替物の引き渡しを請求できる権利。

改正民法には『引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる』と定められています。(民法562条1項本文)

『代金減額請求』は、不備による代金の減額を請求することのできる権利です。

瑕疵担保責任では、『損害賠償請求』と『契約解除』のみだったため、損害賠償請求権を行使することを大ごとに感じる買主は泣き寝入りしてしまうこともありました。

しかし、契約不適合責任により、『追完請求権』や『代金減額請求権』が認められたことで、買主は売主に請求できる範囲が広くなったのです。

2、契約不適合を防ぐための契約のポイント3点

契約不適合責任では取引内容や契約と異なるものを売却した場合に、債務不履行(契約によって約束した義務を果たさないこと)として売主が責任を負います。

契約不適合を防ぐために契約をどう結ぶのか。契約のポイント3点を重要な順に説明します。

1)契約時にすり合わせすべき内容

2)免責の特約が結べること

3)契約の主体によって契約期間が変わる


1)契約時にすり合わせすべき内容

契約不適合責任では、契約書に『書かれていたかどうか』が争点となります。

そのため、買主とすり合わせたいことは全て契約書内に明確に記載することが重要です。

売買契約書には、定型的な条文の他、物件ごとに特約・容認事項が記載することができます。物件の状態や特徴などを細かに記載しましょう。

特に中古住宅など事前に不備がわかっている物件が売買の対象である場合は、その不備についても明確にしておきましょう。

特約・容認事項の記載例はこちらです。

買主は、下記の容認事項を確認・承諾の上、購入するものとし、下記事項について売主に対し、解除、損害賠償、修補、代金減額請求等の一切の法的請求を成しえないものとする。 (容認事項) 本物件○○側の○○塀は、北側隣地所有者の所有であり、経年による傾きにより一部が本件敷地内に越境しています。 本物件の南側は、第三者の「畑」であり、強風等により多量の土埃が発生する場合あります。 本物件の電波受信状況によっては、良好な電波受信を確保する為にアンテナやブー スターの設置ケーブルテレビの引込み等が必要になる場合があります。

容認事項に記載されうる文例集があります。

東京都不動産協同組合より:https://www.kyodokumiai.org/img/pdf/201208learn.pdf

売主として気になること、そして買主からそのような話は聞いていないと言われそうなことは全て容認事項に書きだし、契約書と物件の現状に齟齬がないようにしておきましょう。

2)免責の特約が結べること

契約不適合責任の対象外とする『免責の特約』を結ぶことも可能です。

契約不適合責任は任意規定なので契約当事者同士が合意すれば免責することもできるのです。

追完請求や減額代金請求も含め、懸案事項を一つ一つ契約書に記載。

買主にしっかり説明し、容認の上で、契約不適合責任を負わないことを明記すれば免責となります。

特に、中古物件の場合、設備に関しては経年劣化していることが多くなります。

水道設備、衛生、換気、冷暖房、電気配線、照明などの設備に関しては、売主側が契約不適合責任の取り決め内容を売買契約書でしっかり確認することが重要です。

免責事項の記入一例はこちらです。

買主は、下記容認事項を確認・承諾の上、購入するものとし、下記事項について売主に対し、解除、損賠賠償、修補、代金減額請求等の一切の法的請求を成しえないものとする。 (免責事項) 本物件は築20年を経過しており屋根等の躯体・基本的構造部分や水道管、下水道管、ガス管、ポンプ等の諸設備については相当の自然損耗・経年変化が認められるところであって買主はそれを承認し、それを前提として本契約書所定の代金で本物件を購入するものである(それらの状況を種々考慮、協議して当初予定していた売買代金から金 ○○万円を値引きしたものである)。 買主は、それぞれの設備等が引渡時に正常に稼働していることを現地で確認したが、引渡後に自然損耗、経年変化による劣化・ 腐蝕等を原因として仮に雨漏り、水漏れ、ポンプ等の設備の故障等があったとしても、それらは隠れた瑕疵

3)契約の主体によって契約期間が変わる

契約不適合責任の期間を具体的に制限し、売買契約書に明記することも重要です。

中古物件の場合、契約不適合責任の期間は契約の主体が不動産会社か個人かで差があります。

売主ごとの契約期間の定めはこちらです。

売主 期間の定め
不動産会社 宅地建物取引行法により、引き渡しの日から最低2年以上 
※短くする特約は無効

 

個人 買主との交渉次第で期間の変更や修正が可能
※1ヶ月から3ヶ月程度が一般的
※瑕疵担保責任(契約不適合責任)を一切負わない「免責」を売買契約の特約につけることも可

 

不動産会社は物件売買のプロ。素人である買主に損が発生しないよう、売主が不動産会社の場合は、期間の定めを設けることになっているのです。

そのため個人間の取引の場合は、双方の合意によって修正が可能となっています。

しかし、買主側は契約不適合責任をつけてほしいと思っているもの。

契約内容や特記事項を一つずつ明確にし、双方で納得がいくまで話し合うことが重要になります。

3、売主が事前にできる対応策3つ

売主が事前にできる対応策について以下の3点をオススメの順に具体的に説明します。

1)物件状況確認書に詳細を記入

2)ホームインスペクション(住宅診断)の実施

3)既存住宅売買の瑕疵保険への加入

1)物件状況確認書に詳細を記入

売買契約書だけではなく、物件状況確認書(付帯設備表・告知書など)も必ず別で作成しておきましょう。

付帯設備表とは設備の現況について記載したもの。

設備の撤去の有無や不具合の状況を売主自身が記載します。

不動産会社に仲介を依頼すると、不動産会社から記載を依頼される書類の一つです。

告知書とは、設備以外の問題点について記載したものです。

物件の付帯設備や壁や床、柱など様々な箇所について、買主と一緒に不備がないことを確認することで、契約不適合責任が発生するリスクを抑えることができます。

トラブルを防ぐために、徹底してチェックをしていきましょう。

2)ホームインスペクション(住宅診断)の実施

売却する物件は事前にインスペクションを行っておくことをおすすめします。

インスペクションとは、売買契約前に行う中古住宅診断です。

主に柱や基礎、壁、屋根などの構造耐力上主要な部分や、外壁や開口部などの雨水の浸入を防止する部分について、専門家による目視や計測等の調査のことです。

第三者の目で物件の状態を評価をしてもらえるので、その結果を踏まえて建物の現況を契約書に明記できます。

ホームインスペクションの相場費用は5万円前後。

引渡し後に瑕疵が発覚するリスクを抑えられる制度なので活用するといいでしょう。

3)既存住宅売買の瑕疵保険への加入

売買契約書や付随する書類、ホームインスペクションなどを行なった場合でも、万が一、契約不適合に関するトラブルが起きてしまった場合に備えて、個人間売買用の住宅担保責任瑕疵保険に加入しておくという対策法もあります。

保険の対象となるのは、中古住宅の『構造耐力上主要な部分』や『雨水の浸入を防止する部分』(窓や屋根)などで、保険期間は1年、2年、または5年です。

保険金の支払い対象となる費用は、補修費用や調査費用、転居・仮住まい費用などで、支払限度額は200万円、500万円、または1,000万円と、加入する保険によって変わります。

参考:国土交通省HPより

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutaku-kentiku.files/kashitanpocorner/jigyousya/about_business_guarantee_type.html

万が一のために、加入を検討することもできます。

まとめ

今回は『不動産売却時の瑕疵担保責任と契約不適合責任の違い、そしてトラブルを防ぐための契約のポイントと対策』について解説しました。

まず、瑕疵担保責任と契約不適合責任の違いについてです。

瑕疵の対象範囲については、瑕疵担保責任では隠れた瑕疵が対象でしたが、

契約不適合責任では、隠れた瑕疵という制限はなくなり、契約内容と照らして一致しないものが対象となった点が大きな変更点です。

損害が認められる範囲は、その不動産の瑕疵によって生じた損害(信頼利益)に加え、

契約不適合責任では、本来履行されていれば得られたであろう利益(履行利益)についても対象になります。

買主が売主に対して取れる対抗措置は、瑕疵担保責任では、『損害賠償請求』と『契約解除』のみでしたが、

契約不適合責任に変わり、『追完請求』『代金減額請求』『催告解除』『無催告解除』『損害賠償請求』が行使できるようになりました。

また、瑕疵担保責任が契約不適合責任に変わったことにより、契約をどう結ぶのかが契約不適合を防ぐために重要なポイントとなります。

・契約時に買主とすり合わせすべき内容は、一つ残らず契約書内に明記することが重要。契約書に書かれていたかどうかが争点になるためです。

・免責の特約を結びましょう。特に、中古物件の設備はほとんどの場合が劣化しているので、免責に。契約書に一つずつ明記し、買主とすり合わせを行いましょう。

・契約期間を明記しましょう。個人間契約の契約期間は1ヶ月~3ヶ月が一般的です。

契約不適合にならないよう、売主として事前にできる対応策は3つあります。

・物件状況確認書、付帯設備表、告知書は必ず記入しましょう。売主と買主の認識を揃えるための重要な書類です。

・ホームインスペクション(中古住宅診断)を契約前に行なっておくこともおすすめです。客観的な視点で建物の現況を契約書に明記できます。

・万が一契約不適合に関するトラブルが起きてしまった場合に備えて、瑕疵保険への加入の検討をおすすめします。

売主として、売却後に負担を被ることになったり、トラブルにならないよう、瑕疵担保責任や契約不適合責任についてしっかり理解し注意すべき点を抑えておきましょう。

そうすることで安心して売却を進めることができるでしょう。

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